植物は朝日和

出勤の最終日、空は高く澄み渡り8分咲きの桜が私の背中を押していた。 今日から有給休暇、しばらくはのんびり生きてみたい。本と植物があれば日々は輝くはずだ。

アザミ 涼しげにそよぐ

近頃かなり暑い日と肌寒い日が交互にやってくる。

日除けなのか防寒なのか、どちらにしろ長袖の羽織ものは必要不可だ。

そして、相変わらず日傘。

「日焼けはいやだし、帽子は風で飛ぶんだよね。」

化粧は最低限で、マスク装着。

そろそろ、マスクが暑い時期になろうとしている。

さぁ出発だ。

土手までの道のりはいつもの道と真逆の方向。

家をでたら、今日は左だ。

車では何度も通ったが、歩くと違う風景が見えてくる。

落ちるに任せたさくらんぼ。

少し色づき始めた梅の実。

花芽が上がってきた花菖蒲。

こちらのお宅は紫色で小川の脇は黄色の花菖蒲のようだ。

漂ってくるのは藤の香りだろうか。

門邸に絡み付いた白い藤と壁の上に見え隠れする紫の藤。

もうずいぶん散り始めている。

目の前を大きな蜂が横切った。

藤に巣を作る蜂は針がなく刺さないらしいが。顔に向かってくれば流石に避ける。

藤を庭に植える勇気に拍手を送りたい。

庭藤ならまだいける気がするが、藤は私の手に余る。

「綺麗だし、香りも良いから憧れはするんだけどね。」

蔓を誘引するなら葡萄が良い。

カーポートの上に誘引したい。

手が届くギリギリに実をつけさせれば、今の車高では問題ないはずだ。

私の中で、つるバラは壁際の印象がつよく、蔓とはまた違う認識だ。

蔓とは籠が編めるものだと勝手に思っている。

考え事をしていると時間はすぐ過ぎる。

歩きながらの考え事は雑事であれ学問や仕事の段取り整理であれ、昔からよくすすむ。

ルームランナーはすぐ飽きて何か他の事をしたくなるので、外を歩くのが好きだ。

以前、ルームランナーで早歩きをするのが暇すぎて、本を読んでいた事がある。

これは本に夢中になりすぎてルームランナーより早く歩いてしまい、バランスを崩して危険だった。

ベルトの前のプラスチック部分に足を踏み出してしまったのだ。

やばいと思った時は、かかと部分だけがベルトに引っ張られ、次の踏み出しのタイミングが合わずによろけた。

ならばスピードを上げれば良いのかといえば、物語の佳境の部分でしか歩行スピードは上がっていないようで通常のテンションでは早すぎる。

多分、外歩きは無意識に安全確認や危機回避をしているので暇にならないのだろう。

車だ、猫だ、道が窪んでいる。

そんなことを覚えてはいないが、避けている。

土手は車は通れないが、土手の下に車が何台か駐車されている。

「暑い…」

横目に見えるアザミは木陰で涼しそうに揺れている。

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それにしても暑い。

お茶を持ってきててよかった。

犬の散歩をしてある人達とすれ違う。

車の持ち主達はどこにいったのだろうか。

歩いているとなぜ歩いているのか分からなくなってきて、歩調が早くなっていく。

犬がいるわけではない。

子供がいるわけではない。

声が、痛い。

働ける人間が、働くのをやめて。

日常の幸せをただ日常にしている人達のなかで、途方にくれる。

『役割』

そんな言葉が脳裏を過ぎる。

家事してご飯作ってお弁当もたせて。

余った時間を散歩したり、読書したり。

使えない生地で枕カバーやルームパンツをつくったりしても、金銭を得ているわけではない。

朝から夜まで時間に追われて、方々に意識を張り巡らせて、疲れて帰って家事をして。

それでも社会の歯車であるという自意識は、私を役立つ人間のように思わせてくれた。

 

ひとまず、木陰にはいろう。

アザミはトゲトゲしてるけど、木陰で風に揺れている。